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クレヤボヤンス
# 005 おしゃれ侍 02/04/21


 おしゃれというものを語るほど僕はおしゃれではありませんが。
 でもまぁ、いろいろ考えたりはしますよ。


 おしゃれの方向性というのは、いろいろありますな。
 例えば、スーツできめているゴルゴ13はおしゃれですな。
 ベルサイユのばらに出てくるオスカルも、豪華でおしゃれですな。

 まぁ、あいつらはマンガなので、そんなおしゃれが成立するわけです。

 現実世界に生きる我々がおしゃれな存在であり続けるのは、大変なことですよ。
 普通の人間には、とうてい無理なことです。

 だって、ウチのなかではジャージとかスウェットを着ていたいものね。



 せめて、お出かけの時くらいは、おしゃれであろう、と思ってやしませんか。
 それも困難きわまりないことですよ。



 例えば。
 電車の向かいの席に、おしゃれなお嬢さんが座っていたとしますな。
 ベルベットゴールドスーツに身を包み、ビニールパンサーブーツをはいて。
 ガネーシャ文様のハンケチーフを携えるなど、身だしなみもきっちりと。

 そんな良家のお嬢さんのとなりには、スーパーで買い物を済ませた老人が。
 スーパーの袋からネギをのぞかせた老人が。

 老人はスーパーの袋をゴソゴソとやりますな。
 この袋には、今さっき買ったお豆腐とかチャーハンの素とかが入っておりますよ。

 老人は、今、電車の中で、その袋をゴソゴソして、甘夏を取り出します。
 そして、良家のお嬢さんに勧めるわけです。 食べなされ、と。

 良家のお嬢さんは、ニッコリ笑って
 「 ありがとう 」 と。

 いや、お嬢さんは、「 結構です 」 と言うかもしれませんね。
 電車の中で、知らない人からいきなり甘夏を勧められてもねぇ。


 どちらにしても、この時点で、このお嬢さんはおしゃれな存在ではなくなりました。


 お嬢さんが、老人にどんな対応をしようとも、それは関係ありません。
 甘夏を勧められるという、心温まりそうなハプニングが、
 彼女をおしゃれ界から引きずり下ろすのです。
 甘夏ならまだしも、それがハッサクであれば、なおさら酷い状況です。



 もっと簡潔な話をしましょう。

 飲み会の席で、おしゃれな女のコが僕のとなりに座りますな。
 そんなとき、僕はドキドキしながら、いつも思うのです。

 ( おしゃれなこのコも、小学生のときは給食を食べていたのだろうか? )

 ( 給食を食べていた身なら、キミは一体なんのためにおしゃれをしているのだ!? )

 ファッションは、コーディネイトは、ベイサイドFMは、
 ああ、なんのためにあるのか……。

 そして僕は、意識と物質が混在する真っ暗な海にのみこまれていきます。
 ( でも飲み会は楽しみます )



 こんなことを書いている僕は、でも、おしゃれになりたいのです。
 お金は無いけど、それでも、ほどよく素敵な格好をしてみたい。
 人と会う時に自分の格好を気にしない人は、非常識だと思います。

 なのに僕は、おしゃれという言葉の意味さえもつかめずにいるのです。



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