クレヤボヤンス 映画話 > 長文 No. 001


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ペドロ・アルモドバル監督と 映画 『 セクシリア 』

 今回は僕の一番好きな映画監督、ペドロ・アルモドバル監督のお話。

 笑いと感動を芸術的な構成で調和させる人。
 まさに天才 ( だと思う ) 。


*ペドロ・アルモドバル監督

 世界的に高く評価されている名監督で、最近は日本でもファンが増えたようだ。
 スペインの監督さんで、元漫画家 (だった気がする) 。
 彼の中期の作品は衣装にゴルチエを起用するなど 「極彩色の映像」 として有名。
 最新作は昨年日本でも公開された 『 ライブ・フレッシュ 』 。 いい映画。
 ところでアルモドバルは、ゴルチエのほかにマドンナとも友達なんだってさ。


 何年か前の話だが、レンタルビデオのアルバイトをしていた時に 『 Kika 』 というタイトルのビデオが目に止まって、

「たしか、この映画のCMってエロっぽかったよな……」

と思って借りたのがアルモドバル作品を見始めたきっかけだ。
( 実際は全然エロってなかったが )


* 『 Kika 』 ( キカ )

 ひょっとすると、アルモドバル映画で一番有名な作品かも。
 問題のCMは、鍵穴から女の着替えをのぞいてる感じの映像だった(うろ覚え)。
 ポップでカッコイイCMだったのだが、それを 「 エロってる 」 と思ったワシは精神が病んでいるのだろうか。


 この監督の中期までの作品は、真面目なのか冗談なのか分からない映画が多い。

 「恋する女の気持ち」 をテーマに盛り上げるのかと思ったら、 「犬なみに鼻がいいホモ」 が登場したりする。

 しかも 「鼻のいい男(ホモ)」 を演じているのは今をときめく アントニオ・バンデラス。


*アントニオ・バンデラス

 ラテンづらの名俳優。 最近では 『 マスク・オブ・ゾロ 』 が有名か (ワシは観てないが)。
 アルモドバルは 「マドンナと友達」 だが、バンデラスは 「マドンナをふった男」 らしい。
 バンデラスの 『 マンボ・キングス 〜わが心のマリア〜 』 (マイナー) はつまらなかったなぁ。
 『 フォールームス 』 もつまらんと思う。 これはタランティーノのせいだな。
 『 デスペラード 』 のオープニングはカッコ良かった。 ロス・ロボスの音楽があってこそだけどね。


 何ゆえこれほどの大物俳優が、ヘンテコリンな役を……と思ってしまうのだが、若い頃のアントニオ・バンデラスはアルモドバル監督の映画で

「ホモ」 ・ 「超能力者(ホモ)」 ・ 「レイプ犯罪者」

などを好演し、その後ハリウッド進出を果たしたのである。
 アルモドバルに育てられたっちゅうわけですな。





『 セクシリア 』

 日本で観られるアルモドバル作品のなかでは一番古い作品。


* 『 セクシリア 』

 今回はなんとなくこの映画を取り上げたが、同監督の作品のなかでは評価が低い映画である。
 どうせ観るなら、面白い系なら 『 神経衰弱ぎりぎりの女たち 』 。
 感動系なら 『 ライブ・フレッシュ 』 ( ←ビデオ化されたかな?まだかな? ) がオススメ。
 個人的に一番だと思うのは 『 グロリアの憂鬱 』 である。


 若い頃のアントニオ・バンデラス 、この 『 セクシリア 』 でもホモを演じている。
 (その後もアルモドバル映画で2〜3作、ホモを演じているが、それはおいといて)

 この映画、当初はビデオ化されていなかったので
 「マイナーな作品だし、日本にいたんじゃ一生お目にかかれんな」
と思っていたのだが。  数年前、バンデラス人気が上昇してきた時にあっけなくビデオ化された。
 役者の名前で稼ごうというビデオメーカーの魂胆が丸見えである。

 無名な頃のバンデラスがわき役で出ているだけなのだが、パッケージには

アントニオ・バンデラス

と、タイトルの次にデカい字で書いてある。
 日本のアルモドバルファンは ミーハーなバンデラスファン(←失礼)に感謝したはずだ。



 某書籍で 『 セクシリア 』 というタイトルを知ったときから、
「 せくしりあって何のこと? 」
という疑問を抱いていたのだが、これは主人公の女性の名前であった。

本名 「セクシリア」  愛称 「セクシー」 

 もはや人智を越えた設定としか言えまい。



 この映画、監督が若かったせいか、主題が定まっておらず、終盤に至ってはドタバタコメディの様相さえ呈している。
 しかし僕はバカっぽい映画も好きだし、監督へのヒイキもあって、まあまあ楽しんで観た記憶がある。

 もっとも、この映画の最大のみどころはドタバタの部分ではないのだ。

 みどころは 監督本人が率いるバンドのライブシーン。 これです。



 アルモドバル監督は、実際にバンド 「アルモドバルとマクナマラ」 を結成し、ちゃんと音楽活動もしていたらしい。
 『 セクシリア 』 を観る以前、監督の音楽活動を確かめる手段がなかった僕は、その情報をもっぱら書籍から得ていた。

 ところが 不可解 なことに
 僕が映画関係の書籍を読むたび、このバンドの説明が変わっているのだ。

ある本では 「ポップ・グループ」 なのに

別の本では 「パンク・ロック・グループ」 と説明されている。



( パンクロックはポップに含まれるわけか……。 フム )



 しばらくは、この 「おやつとバナナ」 のような理論によって音楽に疎い自分を納得させていたのだが、映画 『 セクシリア 』 で監督自身のライブを観たとき全ての謎は解けたのだった。



 ( ジャンル分け出来ない音楽……! )

 あえて分類するなら、「 スペイン風パンク数え歌 」。


 僕が 世界で一番好きな映画監督 ( ←いい年のおっさん ) なのに。

 顔にペイントをほどこし、ハンパな女装(?)で熱唱。 動きもアブナイ。

 横のメンバーは白ぬりにサングラスで絶叫。 しかも数え歌。 トホホ。



* 謎の音楽

 「 ♪ワン……ワン・プラス・ワン! 」 からはじまる謎の名曲。
 ちなみに 『 ワン・プラス・ワン 』 はゴダール監督の映画のタイトルだな。
 僕のバイト先の先輩は 「♪セブン……セブン・アップ!」 の部分を高く評価していた。
 ワシもスペイン語が分かればもっと面白いだろうに、残念である。

 「 ♪テン…… 」 まで行ったあと、
 「♪あたしをしゃぶって・あたしをしゃぶって……ディナーの後も・ディナーの前も……」 と続く。
 「♪あんたを求めて下水道に降りた・ねずみが愛してくれたわ……」
 トホホホホ。 多くの人間を泣かせる映画を作ったこの人は……いったい何を言ってるんでしょう。

 歌詞はもうちょっと長いので紹介しませんが、貴方の想像以上に良い曲です。
 詞だけではなく曲もすごいので、興味を持たれた方はぜひビデオ屋へ。
 勇気を出して、店員さんに 「 セクシリアありますか? 」 とたずねましょう。
 人生ロックですよ、実際の話。


 「 アルモドバルとマクナマラ 」 = 映画に出てきた監督本人とそのバンド
……と決まったわけじゃないんだけど。 音楽性にそう違いは無いと思われる。

 僕は、心から尊敬する監督の領域に少しでも近づこうと思い、何度もビデオを巻き戻して、このシーンを鑑賞したのである。

 僕にとっては、ありがちなハリウッド映画を1本観るよりも、この数十秒のライブシーンを観るほうがはるかに価値がある。

 僕の大好きな監督は、音楽の分野でも天才的だったのだ。

 ( というか、ヘンテコリンだったのだ )





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